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また、当時は、個人情報の保護に関する制度的な保証が確立されておらず、いわゆる、プライバシーの侵害のおそれという議論が提起された。さらに、統一個人コードを利用することに関して、各省庁側も体制が整わず、結局、「世の趨勢を見極め、国民のコンセンサスが得られるまで、統一個人コードの検討は中止する」として、問題を棚上げした恰好になっている。

?A 社会保険番号

社会保険番号の統一は上記の個人コード統一の対象アプリケーションの1つであった。すなわち、個人の社会保険番号が統一されていないため、いくつかの社会保険間を移動した場合、年金支給時の事務処理が煩雑であるということと、年金加算にモレがでるおそれがあるという問題があったのである。個人の番号が統一されていれば、上記の問題は解決されることとなり、少なくとも、厚生年金、船員年金、国民年金の3つの社会保険の個人番号を統一したいという要望が行政側にあったものと考えられる。

事務処理用個人コードの統一が実現しなかったため、社会保険番号の統一もなされないまま今日まできたが、1997年1月に厚生年金、国民年金、船員保険の3制度だけではなく、各種共済年金等、8つの年金制度の番号の統一が実現するに至った。

?B 納税者番号

納税者番号の統一も、上記の事務処理用個人コードのアプリケーションの候補の1つになりうるものであった。全国民にユニークな番号が付されていれば、個人の収入の捕捉が確実に行われ、徴収事務の適正化や課税の公平を維持できるというメリットが期待されたのである。

上記統一コードの検討が終了した後も、税制調査会において検討が行われているが、未だ、基本的な方向はでていない状況である。納税事務だけで統一番号制度を導入することは、経済界、国民の協力を得ることが困難であることや、統一納税者番号システムの構築、運用に要する莫大な経費を考慮すると、そのシステムによる税収増分ではいわゆる、採算がとれないという問題があるとされている。税制調査会において、納税事務だけではなく、他の事務処理と共通して利用できるような番号制度の導入の可能性について、今なお検討されている課題である。

?C 住民基本台帳番号

現在、大半の市町村において住民記録システムを構築し、運用しているが、それら

 

 

 

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